脱毛因子「TGF-β」

ここでは、脱毛因子「TGF-β」について解説します。

脱毛因子「TGF-β」とは

TGFは、Transforming growth factorの略称で、トランスフォーミング増殖因子(成長因子)と呼ばれており、TGF-βは、トランスフォーミング増殖因子ベータと呼ばれています。

毛乳頭や毛母細胞の分裂活動を抑制する因子として知られており、その作用が高まると髪の毛は成長期から退行期に移行するとがわかっています。

脱毛を起こす指令はさまざまな原因で発生し、髪の毛に伝達されます。多くの指令は髪の毛の成長に最も悪影響を与えると考えられているTGF-βという脱毛因子へ伝達され、その後、TGF-βからFGF-5(髪の毛が抜けるように命令するタンパク)に伝達されます。
脱毛のメカニズム

脱毛因子TGF-βが作用するまでの流れ

男性の場合、睾丸から分泌される男性ホルモン(テストステロン)は、血液に流れ体内を巡ります。

このテストステロンが、毛乳頭に存在する酵素の一種である5αリダクターゼという酵素と結びつくことで、毛髪を生み出す毛母細胞を萎縮させるより強力な男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)に変化します。

5αリダクターゼは、頭頂部や前頭部に集中していて後頭部にはほとんど存在しないため、DHTも頭頂部や前頭部に集中して産出されます。

DHT(ジヒドロテストステロン)は直接細胞に働きかけるのでなく、毛乳頭にある男性ホルモンレセプターと結合して脱毛因子「TGF-β」を増やします。

脱毛因子「TGF-β」は、FGF-5(髪の毛が抜けるように命令するタンパク)に伝達され、毛乳頭や毛母細胞へ「髪の毛よ抜けろ!」と指令を出します。

髪の毛にはヘアサイクルがあり、製造されはじめて抜け落ちるまで、健康な状態であれば5年から6年生え続けます。

しかし、この脱毛指令が毛母細胞に送られてくると、髪の毛の製造活動は休止され、5年6年という期間を経ずにはるかに短い期間で抜け落ちてしまいます。

こういった髪の毛が増えてくると、ミニチュア化された細くてか弱い髪の毛が増えてきて、やがては頭皮の地肌が目立つようになってきます。

脱毛因子を阻止して育毛

育毛を考える場合、脱毛因子を阻止する必要があります。

脱毛因子を阻止するためには、脱毛因子そのものを阻止するほか、脱毛因子が造られるもとであるDHTの生成を阻止したり、さらにそのもとである5αリダクターゼの働きを抑制したりすることが求められます。

脱毛因子TGF-βの活性化を抑制する育毛有効成分として有名なものに花王が開発したt-フラバノンがあります。t-フラバノンは、サクセス薬用育毛トニックやバイタルチャージの有効成分として配合されています。

また、脱毛シグナルであるFGF-5は、FGF-5Sという因子で抑制できることもわかっています。FGF-5Sという因子は、チャップアップやイクオスなどの育毛剤に配合されているM-034エキスという成分に含まれていることがわかっています。