ここでは、ミノキシジルの効果と副作用について解説しています。
ミノキシジルとは
ミノキシジル(Minoxidil)は、もともとはアメリカで1960年代に高血圧症治療として開発された成分ですが、後に体毛が増えるという副作用が確認されたことから、髪の毛を生やす効果あることがわかり、1980年代に脱毛症の治療薬として承認を受けた成分です。
これまでに世界90か国以上で承認されており、日本でも、ドラッグストアや薬局などでリアップ(大正製薬)という名称で販売されています。
2018年には、アンファー株式会社がスカルプDメディカルミノキ5という名称で販売開始しました。
これらは、一般医薬品のうちの第一類医薬品として販売され、インターネットでも薬剤師の問診を受けながら購入することができます。
海外で販売されているロゲインやカークランドという発毛剤を耳にしたことがある方も多いと思いますがこれらの有効成分もミノキシジルです。
日本皮膚科学会の男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版でも、ミノキシジル外用は男性・女性の区別なく(男性・女性ともに)推奨度A(行うよう強く勧める)にランク付けされています。
但し、ミノキシジルの内服については、D(行うべきではない)と判定されていることに注意を要します。ミノキシジル内服については重篤な副作用が懸念され、AGA治療薬として承認している国はないためです。
ミノキシジルの内服薬(ミノキシジルタブレット)は、医師の説明を受け、メディカルチェックを受けた上で飲むことが大切です。
参考:日本皮膚科学会の男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版
ミノキシジルの効果
ミノキシジルにはAGA(男性型脱毛症:壮年性脱毛症)における「発毛」と「脱毛の進行予防」の効果が認められています。
AGAを発症すると、ヘアサイクルに変化が起こり、成長期にある髪の毛が途中で退行期・休止期にシフトしてしまい、髪の毛が抜け落ちてしまいます。
髪の毛を包み込む毛包がどんどん小さくなっていき、髪の毛が弱々しくなっていき、やがて生えなくなってしまいます。
ミノキシジルは毛髪の成長をつかさどるこの毛包に働きかけ、大きく深く成長させることにより、細く軟毛化した毛髪を太い毛に成長させます。このミノキシジルの作用をディープグロース効果と呼んでいます。
ミノキシジルは、毛包に直接作用し、細胞の増殖やタンパク質の合成を促進することによって発毛作用を示します。
引用:ミノキシジルの作用と効果データ(大正製薬)
ミノキシジルの作用
ミノキシジルの働きについては、解明されていない部分もありますが、主に以下の3点があると考えられています。
血流の改善
ミノキシジルには血管平滑筋に作用して血管を拡張させる作用があり、それにより血流が改善され、髪の毛を製造する毛乳頭細胞や毛母細胞へより多くの栄養素や酸素を行き届かせることが可能となります。
成長因子の産生を促進する作用
ミノキシジルには発毛シグナルを発信するインスリン様成長因子1(IGF-1)や血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などの産出を促す作用があります。
これらの発毛シグナルは毛母細胞の分裂を促し、育毛・発毛を促進します。
毛母細胞の死滅を抑制
ミノキシジルには毛母細胞の死滅(アポトーシス)を抑制して髪の毛が成長期から退行期へ移行することを阻害する作用があり、この作用で脱毛を予防、発毛を促進すると考えられています。
これらの3つの作用で、ミノキシジルは毛包に直接作用し、抜け毛の防止や毛髪量の増加だけでなく、髪の太さにも好影響を与えていると考えられています。
実際、大正製薬が実施したリアップX5プラスの長期投与試験では、6ヶ月後において軽度改善、中等度改善、著明改善をあわせて、9割以上に改善が見られたとされており、髪の毛の太さにも大きな改善が見られたとされています。
すなわち、ミノキシジルは髪の毛を生やして増やす効果だけでなく髪の毛を太くする効果も実験で明らかになっているのです。
AGA専門クリニックでは、AGAの原因であるDHTの抑制に働きかけるフィナステリド(プロペシア)とともに処方されるのが一般的です。フィナステリドで抜け毛を抑え、ミノキシジルで元気に髪の毛を発毛・育毛します。
ミノキシジルの副作用
ミノキシジル外用の主な副作用としてはその因果関係が明らかになっていないものもあるものの以下のようなものが挙げられています。
・頭皮のかゆみ、発赤、発疹、かぶれ、ふけ、使用部位の熱感
・薬液使用箇所のニキビ
・頭痛、気が遠くなる、めまい
・胸の痛み、不整脈、動悸
・手足、顔のむくみ
・原因のわからない急激な体重増加
参考:リアップX5製品情報より
また、使用し始めてすぐに脱毛が起こる初期脱毛というものを体験する方もいます。初期脱毛は、ヘアサイクルをリセットすべく最初だけに脱毛するもので通常は1ヶ月ほどで収まり、後は徐々に発毛してきますので心配はいりません。
ミノキシジルタブレット(内服用)は特に注意
さらに、国内では発毛剤としては認可されていませんが、ミノキシジルタブレットというミノキシジル(通称ミノタブ)の飲み薬もあります。
外用よりも効果が高いとしてAGAクリニックなどでは処方されることがありますが、効果が高い分、様々な副作用も報告されています。
ミノキシジルタブレットの主な副作用としては、その因果関係が明らかになっていないものもあるものの、
・低血圧
・反射性高血圧
・全身の多毛症
・手足のむくみ
・頭痛、めまい、ふらつき、動悸、息切れ
・赤ら顔、皮膚の潮紅
・性的不能、勃起障害
などの副作用のほか、腎性全身線維症(腎不全、皮膚の硬化、関節拘縮をきたし、身体機能障害に陥る病気)、高カリウム血症、多臓器不全等重篤な副作用のリスクもあるとされていますので注意が必要です。
特に、血圧の低下や全身の多毛症、手足のむくみなどは比較的多くの人が経験するようですし、服用する濃度が高いほどその傾向が高くなるようです。
ミノキシジルタブレットは、個人輸入などでも海外から簡単に入手することができますが、このような重篤な副作用のリスクもありますので、安易に手を出すのではなく、前もって医師などの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
このように、ミノキシジルにはAGAのみならずその他の薄毛・抜け毛対策として優れた効果を発揮することが期待できますが、反面、思いもよらない副作用のリスクがあることも事実です。
特に、内服薬は育毛剤としては認められている訳ではなく、重篤な副作用のリスクもあることから安易に服用することはおすすめできません。
どうしてもミノキシジルを使用する場合は、ある程度の副作用のリスクを覚悟した上で外用のミノキシジルを、内服のミノキシジルを服用したい場合は事前に医師へ相談することをおすすめします。