ここでは、毛髪の再生医療にも活用されている成長因子(グロースファクター)について解説します。
成長因子とは?
成長因子とは、細胞の成長・増殖・分化を促進するタンパク質の一種です。
別名「グロスファクター(gf)」とも呼ばれています。
人間は60兆とも言われる数の細胞によって構成されていますが、成長因子は、この細胞の分裂・増殖・分化などを司るほか、血管の製造やコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸の製造などに大きな役割を果たしています。
成長因子は、体内で作られますが、加齢によって、自身での生産量が減少していきます。
その結果、各細胞の働きが衰えて老化の原因となります。
こと毛髪においても毛乳頭細胞や毛母細胞の活動にも関係しているため、成長因子の減少によって抜け毛や薄毛が進行してくるようになります。
成長因子は、細胞の活性化、皮膚細胞の増殖などの効果があるため、発毛・育毛分野のほか、美容やアンチエイジングの分野にも多く活用されています。
プラセンタを配合した化粧品やサプリ、ドリンクなどがアンチエイジング商品として人気があるのはこの成長因子を多く含んでいるためです。
成長因子の育毛効果
成長因子は毛髪の再生医療でも活用されている
成長因子は、毛髪の再生医療でも活用されています。
成長因子には、毛乳頭細胞や毛母細胞、毛細血管などを活性化し、細胞の新生や毛髪を再生する働きがあるためです。
毛髪の再生医療には、
- グロースファクター再生療法や
- HARG(ハーグ)療法
といったものがあります。
HARG療法では、幹細胞から抽出されたタンパクAAPE(幹細胞抽出増殖因子蛋白質)という150種類以上の成長因子と毛根再生に必要なビタミンやアミノ酸などを配合したHARGカクテルと呼ばれるものを投与するのに対して、グロースファクター再生療法では5~6種類の成長因子のみを用いる点で異なります。
いずれも直接頭皮に注入し毛乳頭や毛包の細胞を活性させ毛髪を再生成長させる治療法です。
HARG療法に利用される成長因子(AAPE)には、
- ケラチンを作り出す毛母細胞の増加を促進するKGF(ケラチン細胞増殖因子)
- 頭皮の血管新生に必要不可欠なVEGF(血管内皮細胞増殖因子)
- 毛母細胞の増加を促すPDGF(血小板由来増殖因子)
- 休止期の毛包を成長期へ導くとされる生体細胞成長因子
- 毛母細胞の増殖を促す働きがあるFGF(線維芽細胞増殖因子)
といったものがあります。
一般的に治療の前に麻酔をし、注射による方法や小さな針がついたプラスチック製の医療用ローラーなどで頭皮の内部に浸透注入する方法で眠っている幹細胞を目覚めさせて発毛を促します。
医療機関でのみ施術が認められている発毛・育毛療法です。
HARG療法による発毛率は、非常に高い確率で効果を発揮すると言われていますが、効果がないといった個人差があるのも事実です。
通常は、ミノキシジルやプロペシア(フィナステリド)が併用して処方されるのが一般的ですのでどちらの作用で効果が出ているのか判断できない面もあります。
ミノキシジルやプロペシア(フィナステリド)が併用して処方される理由は、成長因子は発毛・育毛環境を整えて発毛・育毛を促す機能はありますが、AGA(男性型脱毛症)を発症した場合などの抜け毛・薄毛の原因にはやや対抗できない弱い部分があるためと考えられています。
成長因子を配合した育毛剤
成長因子の注入療法はアメリカやヨーロッパ、アジア各国で数千を超える臨床と治療が行われていますが、副作用やアレルギー等の報告はなく、高い安全性が確認されています。
このような経緯から、近年、成長因子そのものや成長因子を含むプラセンタといったものを育毛剤や育毛シャンプーにも配合するメーカーが増えてきました。
販売開始されたばかりであり、他の育毛成分と混同しているため、2018年現時点では成長因子単体でのはっきりした育毛効果は未知数です。
成長因子の働きが発揮できる受容体は皮膚の真皮層部分に多く存在します。
毛髪の再生医療では、頭皮に穴をあけて注入するため、成長因子を真皮の部分まで届けることができますが、通常の育毛剤を頭皮に振りかけたりシャンプーするだけでは、表皮の角質層のバリア機能で殆どの成分がストップしてしまいますのでなかなか真皮の部分に届きません。
毛穴も成分を簡単に通すほど大きくなく、様々な物質で詰まっていたります。
このため浸透力という課題が残り、過大な期待はできないかもしれません。