ここでは、フィナステリドの効果と副作用について解説しています。
フィナステリドとは
フィナステリドは、米国の製薬会社であるメルク社が開発した抗アンドロゲン剤(男性ホルモンの働きを抑制する治療薬)です。メキシコに自生するノコギリヤシという植物の薬効成分を研究してできた化学合成品です。
もともとは、前立腺肥大や前立腺がんの治療薬として開発された成分ですが、後に発毛効果が確認され、AGA治療薬プロペシアという商品名で販売されるようになりました。
現在は世界60か国以上でAGA治療薬として承認されています。
プロペシアは、日本でも、MSD株式会社(旧:万有製薬)が臨床試験を行った後、厚生労働省の認可を得て2005年12月から国内で初めてのAGA治療薬として販売開始されています。
フィナステリド(内服)は、日本皮膚科学会の男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版でも、男性型脱毛症にはミノキシジルとともに推奨度A(行うよう強く勧める)にランク付けされています。
尚、女性については、その有効性が認められていないため、推奨度はD(行うべきでない)にランクされていることに注意を要します。
参考:日本皮膚科学会の男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版
フィナステリドの効果
AGA(男性型脱毛症)の主な原因物質はDHT(ジヒドロテストステロン)です。
DHTは5αリダクターゼによってテストステロンが変換され生成されます。このDHTが毛乳頭細胞に存在するアンドロゲンレセプター(男性ホルモン受容体)と結合すると、成長期にある毛髪に対して脱毛指令が出されます。
その結果、成長期にある毛髪は、退行期・休止期にシフトしてしまい、退行期の細い毛髪が増えたり、やがて抜け落ちてしまい、薄毛になってしまいます。
フィナステリドの作用
このAGAの流れに対してフィナステリドは以下の働きでAGAを抑制します。
5αリダクターゼを阻害
フィナステリドは、AGAの原因であるDHTを生成するのに必要不可欠な5αリダクターゼ(Ⅱ型)という酵素を阻害することでDHTの生成を抑制します。
服用したフィナステリドは、血液を通して体内を巡り、頭皮の毛乳頭細胞に存在する5αリダクターゼの活性を抑制します。
その結果、生成されるDHTの量が減少し、脱毛指令も減少するという訳です。
これにより毛髪の成長期を延長させ、抜け毛を抑制することができます。
国内の臨床試験ではプロペシア1mgの投与(服用)
・1年間で58%
・2年間で68%
・3年間で78%
の改善効果が認められており、長期間投与(服用)で効果が高くなる傾向を見せています。
フィナステリドの副作用
プラセボ(効果のない偽薬)を混ぜた長期に渡る臨床試験では、発現率は低いものの以下のような副作用のリスクが確認されたとされています。
- 性欲減退
- 勃起障害(ED)
- 射精障害
- 精液減少
- うつ
- 肝機能障害
いずれも発生率は1%前後とそれほど高くはないものの(肝機能障害については、もともとの肝機能の状態に左右されるため発症率不明)、これらの症状ががあらわれた場合は、服用を中止したり医療機関に相談することをおすすめします。
肝機能障害など重篤な症状の可能性もありますので、定期的に血液検査などを受けて、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの値を注視しておくことをおすすめします。
ミノキシジルで多くみられる初期脱毛ですが、フィナステリドは抜け毛を抑える働きが中心のため初期脱毛は起こりにくいと考えられています。
尚、フィナステリドは、ミノキシジルと同じくAGAの根本を治療する薬ではありません。
服用を止めると毛髪の状態が元に戻ってしまうため、長期服用となる可能性がある薬です。
長期の服用でこれらの副作用のリスクはさらに高くなると考えられるので十分注意する必要があります。
フィナステリド取扱い時の注意点
フィナステリドは、男性胎児の生殖器官の発育に影響を及ぼす可能性があると言われていることから、妊娠している可能性がある女性や妊婦、授乳中の人は服用は禁止されています。
また、フィナステリド服用中は血中にその成分が含まれるため、献血はNGです。
献血した血液が女性に使われる場合があるためです。献血をする場合は、最低1ヶ月は服用を中断したほうが良いとされています。